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あの日、私がお手洗いに入っていたのに、
レンタサイクルの管理人のおばさんに、電気を消されてしまいました。
窓もないトイレだったので、真っ暗になってしまいました。
私、お客さんだったのに・・・。
私がいることに、気づかなかったのでしょうか?
それとも、電気を消すのが習慣になっていたのでしょうか?
妙に悲しくなりました。
お客に全く気がつかないそんなタフなおばさんなんだから、
きっと大丈夫!
「また来て下さいね」と言ってくれたのだから、
きっと大丈夫!
また行きますから。必ず行きますから。
だから、そのときは、「あのときは大変だったのよ~」って笑ってください。
大学で同じサークルだった人が、生きてた。
三陸の津波を生き延びてくれた。
メールを見た途端、やっと私も生きてる気がした。
一週間、長かったよ。
地震の後、東京にいる娘と連絡がつかない。
月曜日、何とか繋がった電話を娘の職場にかけると、
出勤していないと言う。
「そういえば、広瀬さんは週末に仙台に行くと言っていました。」
職場の一人が答える。
ありえたけれど、起きなかった。
だからこうして生きている。
たまたま2週間前に地震が起きなかったから。
たまたま仙台に遊びに行くのを前倒しにしたから。
あの日、私は広い砂浜と透き通った海にはしゃぎ、
松林をくぐって貞山運河にてサイクリングした。
あの日みた風景
貝殻がたくさん落ちている白い砂浜。ちょっとだけ空き缶や花火も落ちている。
夏の海の家のためにか、空っぽの砂浜にも電信柱があった。
テトラポットの合間を抜ける波が複雑に打ち寄せる。
少々荒々しくも、心休まる波の音。予想以上に上ってくる波が楽しい。
あっという間に砂に埋もれる足跡。
後ろ向きに歩いて、足跡が突然消えるトリックを作ったり。風が強い。寒さで耳が痛い。
しんと静まり返った松林。運河には鳥が休憩している。誰かが木に引っ掛けたオレンジ色のルアー。水面に映った青い空。
運河が庭のように家の脇にあり、マイカーのように小船がある。たぶん神事のための竹が飾ってある。
まっすぐに伸びた七北田川。
背の高い枯れ草の影にひっそりと住む人の気配。
広々とした田んぼ。食の王国。穏やかな泥の匂い。
農道をトラックが走る。学生も自転車をこいでいる。海と平行して、遠くに一本道路が走る。田んぼの近くで、別のサイクリングを楽しむ人がお弁当を食べている。
老人ホーム、小学校、バス路線沿線の住宅地、歩道をあるくのもちょっと怖いほどのスピードで走り抜ける車。
木の床に、大きな窓ガラスに、心地よい陽だまりがあるレンタサイクル場。
音楽が流れている-「Be As One」。
貞山運河の歴史や、近くの公園のイベント様子の写真、航空写真、新聞・・・そんなプレートが飾ってある。歴史ある貞山運河。
散歩する人、凧揚げする親子、遊具で遊ぶ子供、休憩している運転手さん、乗馬を楽しむ人、野球をする少年野球のチーム、「また来てくださいね」と言ってくれたレンタサイクルの管理人さん。
あの日みた風景。
あの日みた穏やかな風景が、今は突き刺さる。
不満があるわけではない。
ただ不安がある。
もうすぐ年度末だ。
納期に間に合わない。
片道2時間半の通勤。
体はもつだろうか?
帰りにスーパーに行くと、
パンはなく、米もなく、スパッゲティもない。
水もなく、お茶もなく、牛乳もない。
納豆も豆腐もない。
被災地を思うと、自分の悩みの小ささに飽きれる。
家族だって無事だ。
でも、辛いものは辛い。不安なものは不安だ。
こんな自分が浅ましい。
唯一、良い事がある。
今年の夜桜は、計画停電や節電で、きっと静かになるだろう。
わずかな街灯に照らされて、きっと懐かしい故郷の雪景色に見えるだろう。
今更だけれど、なぜ恋するんだろう。
今更過ぎて、4年以上の付き合ってる彼に申し訳ないけれど
なぜ、好きになったんだろう。
どこが好きかは分かるけれど、どうして好きになったんだろう。
好きだから、恋するの?
一人でいるより、ずっといい。だから恋するの?
てか、恋って何なんだろう?
どきどきが減って、穏やかな気持ちになっても、まだ恋なの?
なんて、今更の思春期。
毛嫌いしている人の良いところを見つけると、
なんとなく、憎く思えることがある。
それが続くと、「憎い」と言いつつ、尊敬とか感服を感じてくる。
いつの間にか、「憎い」が褒め言葉になる。
全く、遠藤周作は、私にとってそんな奴だ。
![]() |
母なるもの (新潮文庫) 著者:遠藤 周作 |
全く、偉大な作家に「憎い」なんて、私も不遜な奴だな。
今夜(10日夜)は同期会。初任者研修のクラスの半分以上が集まった。
職場の上司たちも好きだけれど、やっぱり同期の集まりはいい。
気楽で、気さくで、悩みも共通。
でも、男はいくつになっても子供なのね。
カラオケにノリノリの男たちを見てそう思った。
「男はすぐに童心に戻れる。その瞬間ばかり見ているから、ただの子供に見えるだけ」
なんていう人はいるけれど、うーん、どうなんだろう。
祖母は、あの時知っていたのだろうか?
それとも、ただ涙もろくなっていただけだろうか?
あの日、最後に会ったあの日、帰り際に涙ぐんでいた。
これがお別れだと、感じていたのだろうか?
そんな気配がして、でもそれを認めたくなくて、振り返らなかった。
いつもと違う別れ方をしたら、それが現実になってしまう気がして、
「また来るから」と別れてしまった。
祖母との思い出は、あまり多くない。
少し恐くて、甘えた記憶はほとんどない。
でも、古い写真を見てみると、祖母は孫を好きだったんだなと分かる。
私も、今更だけれど、祖母が好きだったんだと分かる。
祖母の強さを、心の支えにしていたんだと分かる。
毎年欠かさず、お年玉も誕生日祝いをくれて、
悪い夢を見たと電話をくれることもあって、
なのに、
返せたものは何もない。
初給料でスカーフを贈れたことだけ、間に合ったことだけが唯一心の救い。
でも、それもたった1回、試しに肩にかけただけだ。
火葬のとき、祖母に持たせてあげたいものが、みんなあっただろうけれど、
全てを入れられるわけではない。今は棺に物を入れてはいけないそうだ。
スカーフを持たせてあげることができたのだから、
いつまでも、周りに気をつかわせるわけにはいかないだろう。
もうすぐ49日。
「どんなに緑色のバッタも黒くなる。バッタは翅が伸びて、遠くへ逃げられるが、人間はできない。ただ、凶暴になるだけだ」
(伊坂幸太郎 『グラスホッパー』 角川文庫P160)
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グラスホッパー (角川文庫) 著者:伊坂 幸太郎 |
悪意・・・(日常用語)相手のよくない結果を望む心。
(法律用語)ある事実について知っていること。
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